いくつか音を立てて消えていく
素晴らしい街に耳をすませば
車のエンジン 電車の揺れ
鳥の声もかき消され
風の音さえ聞こえない
何を聴いているんだろう
何が聞きたいんだろう
町を歩くときにイヤホンをして
いつでも聞ける音を聞く
歩くときにしか聞けない音を無視して
何を聴いているんだろう
何が聞きたいんだろう
好きな人に会いにいくのは
声を聞きたいから
電話越しでは聞こえない
なめらかで耳を触る声に包まれたいから
少しずつ色あせていく声に
気づかぬまま
最期の一声を聞けたら
それで幸せなのかもしれない
憂鬱な日々を囲う
聞いているようで聞いていない
意識せずに焦らずに
保存できない音たちを
こぼれ落ちていく
思い出せない音たちを
一瞬愛してはまた忘れていく
寂しいけれどそれが運命
目を閉じて感じてみたい
音だけの世界
聞いているよと語りかけて